インクルーシブデザインラボラトリー 並木研究室
インクルーシブな科学教育環境の構築
現在大学では、キャンパスライフや教室での授業を支援する環境の整備がすすめられ、障害のある学生のため、さまざまな支援が利用可能になっています。一 方で、理工系分野での実験・実習など、手足を動かすような技能(ハンズオン技能)が要求される場面では、いまだに環境や支援が十分でなく、障害学生の参加は難しいままになっています。
この研究室では、科学におけるアクセシビリティ、特に、障害や病気を持つSTEM 分野の学生や研究者が自由に実験を行えるようなインクルーシブな研究室環境の構築を進めています。私たちの実験室はすべて、車椅子をはじめとした障害のある人のために、インクルーシブデザインに基づいて開発されており、実験台、流し台、試薬収納キャビネット、緊急用シャワー、洗眼洗面器などは、車いす使用者が使用できるものを用意しています。将来的には、ここで開発されるようなアクセシブルな実験器具が、他の大学や教育機関でも標準的に使用されることを目指しています。
障害のある研究者の多様なニーズがある一方で、研究室のアクセシビリティは優先順位が低いままになっています。日本では、学会における多様性を促進するための取り組みがいくつか行われていますが、科学におけるアクセシビリティを向上させるためには、さらなる取り組みが必要になります。アクセシブルな研究室の構築が、日本の学術界における衡平性、特に障害者インクルージョンを促進する概念実証になることを願っています。現在準備中のバリアフリー実験室は、障害のある学生が実践的な研究経験を積むことができるよう、公開する予定です。この取り組みを通じて、インクルーシブな研究室のアイデアを、日本の他の研究機関や教育機関にも広めていきたいと考えています。
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教養学部基礎化学実験室の再現VR
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実験支援ツール
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障害学生を対象とした科学実習
ポスドクのころに神経系の難病で歩けなくなり、一度研究をあきらめました。いろいろな縁があり、今また大学で研究をしていますが、もう一度研究をやってみようと思えたのは、世の中には障害のある研究者が確かな数いること、いくつかの国では障害のある研究者を歓迎する文化や制度があることを知ったからです。
研究上での私の困難は、実験室環境のバリアにあります。実験室のデザインに、障害のある人の事が想定されていないことが原因のひとつです。この課題は他の人たち、例えば障害のある学生や、病気や中途障害のある人、高齢者にも共通するものです。学内外のいろいろな立場の方と協力して、障害など、制約の大きな人が使えるデザインを考える「インクルーシブデザイン」のアプローチで、大学の実験室環境のバリアフリー化に取り組んでいます。この場所を活用して、障害のある生徒へ科学の研究体験を提供していく予定です。障害のある人のSTEM 分野への参加を拡大するという世界の流れを、日本でも実現していきたいと思います。
メンバー
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- 並木 重宏 准教授
専門分野:生物学
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