第28回 飯田 誠 特任准教授

飯田 誠 特任准教授

先端にて、未来と希望を切り拓く

光栄にもリレーエッセイの一人として、『先端とは』のお題をいただき、ふと考えた。イメージから入るか言葉や意味から入るか。折角なので、自分の専門分野である流体力学的イメージから考えてみることにした。

先端を走るイメージは、100m走の抜きんでる感じもあるが、自分が目指していきたい先端研究のイメージは、マラソン、競艇、F1、競輪など長距離の競技のイメージに近い。このような各種速さを競う競技において、先頭を走る選手は空気や水などの流体抵抗を受ける。追い風ならまだしも向かい風を受けた時には非常に強い抵抗力を受ける。後続選手は、前を走る選手のすぐ後ろにつけることで流体抵抗を軽減することができ、体力を温存しておくことができる。追い抜こうとしその軽減領域を出ると先頭の選手と同じ流体抵抗を受ける。これまで、先人の既存研究の後ろを追いかけてきたときには、受けなかった抵抗(課題)や考え方、考えるべきことが現れる。そんな抵抗とともに、これまで先人の背中に隠れてしまっていた景色が眼前に拡がる。誰もいない景色を見続け、未来を目指して走り続ける。マラソンなどの競技と少し違うのは、ゴールの設定かもしれない。42.195kmをゴールにすえる研究者は少ない気がする。もちろん、各研究者や分野のゴールはある。しかし、先端研究者の多くが、通過点としてはみているがゴールとは見ていない。そういう意味で先駆者でありつつ、測量士のように地図上に新たな一つの場所を定義し、皆がたどり着きたい山頂点、測量点を設置しているのかもしれない。

また、流体力学的視点で先端研究を考え、もう一つの側面も思い浮かんだ。先頭を走るランナーや船は、流体抵抗を受けるとともに周りの流体を伴う。先頭に少し遅れて周辺の流体が続いていく。船の後ろのできる波模様のように。同じ先端研のメンバーでもある鈴木康広氏のファスナーの船が描く波模様が同じようなイメージだ。未来社会のファスナーを開けていくようなあの作品が、個人的に心地よく、そして結構気に入っている。話が逸れてしまったが、連続的につながっている流体は先頭に引きずられるように前に進み、横に拡がる。

自分の目指したい先端研究の一つの形は、社会を水面に見立てたときの先陣を切る船のようなものだ。前に進むための必要な抵抗(課題)は受け、それに打ち勝ち、共に進むみんなの抵抗を減らし、(結果的に)波模様のように社会全体がその動きに同調されていく、そんなイメージを抱いている。

ドネラ H.メドウズ著、ローマクラブの『成長の限界』に出会ってから、自分のテーマは限界とは相反する『持続性』と『自然調和・適正化』を一つの研究テーマとし、そしてそれは目標である。2030年、2050年、そして2100年における社会の持続性の礎となる研究開発技術をテーマに掲げた。SDGsが叫ばれる昨今、現段階では未来社会は、必ずしも明るいとは言い難い。ただ、このまま予想される地球規模の苦難がもし現実になってしまった場合、2100年の子供たちが受ける抵抗は非常に強いことは容易に想像される。今だからこそできる研究開発をすすめ、より一層の抵抗が強くなる地球環境、未来社会に向けて、持続性が確保できるような社会システムの構築に向けて、未来をそして希望を切り拓いていけるような、未来社会を引寄せる先陣であり先端である研究に身を馳せていきたい。

(2019年8月)

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