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高橋研究室:指先工場・光の革命

指先工場・光の革命
光製造科学 高橋研究室
スマートフォン1台で、あれもこれもできる。フィットネスウォッチでヘルスケアデータも取れる。 自動運転化へと進むIT自動車…。身近なモノはどんどん賢く小さくなるが、モノを作り出す工場は、果たしてどうなのでしょう。
光を駆使して最先端モノづくりを目指す高橋研究室が考えるのは、人がつかめないデバイスを製造する小さな小さな工場。それは一体…?

 


実験中の学生と話す高橋教授
    実験中の学生と楽しそうに話す高橋教授

 

■ 光を道具に、モノづくりを改革

「現在の工場では先端技術を駆使して20nm以下の形状スケールも扱いますが、基本的に最後は、人が手で持つサイズの製品を作りますよね。 私たちが考えているのは、人が手でつかめない小さな部品やデバイスを自動化して作り、しかも数十mmの箱の中に納まるサイズの工場です。 これはまだ、世界のどこにも存在していません」と説明する高橋教授。研究室では、計測、加工など光技術の可能性を追求し、光を究極の道具として展開した先に、 その小さな工場「セルインマイクロファクトリ」の実現を描いている。
光は道具、と高橋教授は言う。
「光技術は計測や加工を行う道具で、言ってみれば、医者が使う聴診器、メス、ピンセットなどと同じです。 メリットは、それらをすべてエネルギー操作性の高い光で展開できること。研究室で扱うさまざまな光の技術を統合したコンセプトが“ セルインマイクロファクトリ ”です」
例えば計測。光でモノを見る場合、通常は200nm程度が限界となり、それより小さいものを見る場合は電子顕微鏡に頼ることになる。 電子顕微鏡はたしかに分解能は高いが、一般的には真空環境が必要となり、生産現場での活用を妨げる。 環境を真空に限定しない光のメリットを拡張できれば、光での計測クオリティが上がり、モノづくりの現場が変わる。 高橋研究室では、ただ光を当てても見えないものを、光を動かし複雑な計算を行うことによって、一度光を当てただけでは見えない部分をあぶり出す 「局在光シフト再構成型超解像法」を研究。 また、光を使って粒子を操作し、化学反応によって微細な構造を作る「光触媒ナノ粒子による三次元構造創製」、 シリコンウエハに付着するゴミなどの欠陥を液体を使って自動的に探し出す「自律的欠陥探索(分裂型マルチ)プローブ」など、製造現場の変革に直結する研究が並ぶ。
「中でも、エバネッセント光という特殊な光を使ってモノを作る研究が進めば、100nmオーダーの極めて薄い層を加工単位とした3Dプリンタが実現します。 エバネッセント光を光造形に使う研究は、世界でもおそらく私たちだけです」と、高橋教授が見せてくれたのが下の銀杏の画像だ。


エバネッセント光で造形した東大ロゴの銀杏マーク
    エバネッセント光で造形した東大ロゴの銀杏マーク。
    100μm×100μm程度の領域に、厚さわずか100nmの一括造形を実現(高橋研・鈴木裕貴さん 作)

 

■ 見えない光「エバネッセント光」が未来を照らす

視覚は、その情報量の多さからもっとも重要な知覚のひとつだが、その担い手は、やはり高橋教授が道具であると主張する光。 通常私たちに見える光は、物体が発した光や物体で反射・散乱された光が空間を伝わって届いている。 すなわち、日常、私たちが利用している光は必ず伝搬を伴ったものだ。一方、エバネッセント光は、屈折率の異なる媒質間において特定の角度で光が入射したときだけ情報が逃げずに全反射し、 その際に低屈折媒質側にわずかにしみ出す光の層のこと。空間を伝播しない性質、にじみ出る層がわずか100nm程度の薄さという特徴に着目した高橋研究室では、エバネッセント光を光造形に 応用する技術を研究する。「伝播しないので情報が保たれる上に1層が薄い特徴を活かし、層厚が100nmオーダーの微細な3Dプリンタを目指します。 “面”で一括して層を作るため、特にパネルのような薄く広がった構造に複雑な微細機能構造を付与といった特殊な造形が可能になります」と、高橋教授。 太陽電池パネル表面の微細加工に使えば、光の反射を抑え、集光率アップに貢献できると言う。 「従来の装置では1層あたり5μm程度で、これは100nmで造形するエバネッセント光の50層に相当します。エバネッセント光なら、より緻密なモノづくりができるはずです」。

現状は1層あたり数百nmの厚さで10層の積層を実現。積層の安定性などクリアすべき課題はあるが「エバネッセント光は微細な情報を持っているため、もともと計測で使われていました。 エネルギーが局在しているという意味では、当然、加工でも使えます。光造形のアイデアを思いついた当初は、エバネッセント光で樹脂を固めるだけでもかなり時間がかかって。 正直、これが限界かな…と思うときもありましたが、学生がよくがんばりクリアしてくれました。今では、当時思いもしなかった新しい芽がいろいろ出てきています。 我慢強く研究を続けることも大事ですね(笑)」と話す様子は明るい。



<エバネッセント光って?>


 

■ 目指すは横幅10mm、奥行き数mmの工場

今まで見えないものが見え、作れなかったものが作れるようになったとき、そこにある光造形技術の統合形「セルインマイクロファクトリ」が登場する。 かつてない極小サイズのこの工場は、高橋教授のオリジナルアイデアだ。現状で最小とされるのは、机上にミニチュア旋盤等の微小化した工作機械を配置した 「デスクトップマイクロファクトリ」だが、「セルインマイクロファクトリ」は、計測、加工、ハンドリングから搬送、欠陥探索まで横幅数10mm、奥行き数mmの中に最先端光技術を集結させ、 最終製品は1mm以下を目指す。オリジナリティの源を尋ねると「僕は関西人なので、笑いが大好きなんです。 笑いって要はギャップですよね? おそらく研究も同じで、普段ならこうするけど、そうきたか!という思いもしないようなギャップが必要なのかもしれません。 よく、朝方の寝ぼけた状態で浮かんだアイデアを自分宛にメールしたりしていますよ」 関西弁で話は続く。
「私は工場やモノをどうするかというアプリケーション寄りの研究ですが、光に関わりたいという思いがあるんです。 光って非常に根本的なエネルギーで、地球で生命体が誕生したのも、石油があるのも、大昔の太陽の光がエネルギーをくれたからで、今も私たちはその恩恵を受けています。 光には科学として探求すべき部分がまだたくさんある。光科学に関わりながら、実践も追求できるのが、この研究の面白いところです」 熱く語る高橋教授だが、最近、大きな悩みを抱えている。
「講義でですねぇ…ギャグがスベってばかりなんですよ。お互いにしんみりした状態になるので、かなりツラいです…」。



そこが知りたい! 指でつまめる工場 「セルインマイクロファクトリ」 区切り線
見えなかったものを見る。作れなかったものを作る
超小型化で超省エネ。工場の概念を覆す、モノづくりの未来形。

 

教授の横顔

高橋 哲 教授
大の冒険旅行好き。大学時代には2ヵ月かけてオートバイでオーストラリアを一周した。大荷物は積めないが故障時の備えは必要なので工夫を凝らす。 「荷物のパッキングは今でも大好きなんです」と話す高橋教授。研究室の運営ポリシーは「チャレンジ精神にあふれ、繊細かつ大胆」。 準備や対応は繊細だが大胆な行動を楽しむ冒険旅行そのもの。「これは相手がモノでも人でも同じです。 小さい構造は表面張力に弱い、というモノの気持ちをイメージしないとできない研究だし、思いやりがないとチームもうまくいかない」。 高橋研究室の面々はというと「かなりキャラが濃いですよ。総長賞を獲った学生もいれば、社交ダンス部や応援団長も。 こんなに多様なタレント溢れる人たちと毎年新しく知り合いになれるという意味でも、大学の研究室という職場は面白いですね」。




 

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