国際安全保障構想分野 小泉悠研究室
私たちはどんな世界に生きたいのか
国際安全保障構想分野という名称には、単に安全保障を「研究」するだけではなく、積極的に「構想」していくという想いが込められています。日本をめぐる安全保障環境がかつてなく厳しさを増す中で、安全保障に対する関心は確かに高まりました。しかし、安全保障という問題にどう関わっていけばよいのかについては、まだ手探り状態が続いているようにも思います。また、安全保障の問題をめぐっては、イデオロギー的な対立に陥って建設的な対話が難しくなることも珍しくありません。
「構想」という言葉を用いたのは、このような状況にチャレンジしていきたいと考えたためです。そのためには、個別の安全保障政策に関する立場の違いを乗り越えて、ある程度皆で共有できる最終的なビジョンがなければならない。このように考えるが故に、国際安全保障構想分野は古典的な安全保障論研究や国際関係論研究だけでなく、価値観やこれをめぐる人々の認知についても研究対象としています。
また、安全保障政策を機能させるためには抑止対象の考え方を深く理解している必要があります。このような観点から、ロシアなどユーラシア諸国の軍事・安全保障をも研究対象としています。ここでは伝統的な地域研究の手法に加え、衛星画像分析やビッグデータ解析などの新しい研究手法も積極的に活用しています。
私はロシアの安全保障政策研究をコアな専門分野としています。つまり地域研究(ロシア研究)と、安全保障研究の中間みたいなところにいるわけです。こういう研究者が何をやっているかというと、例えばロシア軍の出している新聞や雑誌を片っ端から読んでいます。最近では衛星画像を使ってロシアの軍事拠点を観察するという方法も使うようになりました。かつてはロシア国内で開催される武器展示会を見にいくこともできたのですが、ロシアがウクライナ侵略を開始して以降はもう現地を訪れることはしていません。こんなふうに、自らの正体をなかなか明かしてくれない相手をあの手この手で観察し、分析していくというのが私の研究スタイルです。オーソドックスな学術研究とも、いわゆる政策志向ともちょっと違い、「職業オタク」みたいな感じでしょうか。なんとなく、終わらない夏休みの中で自由研究を続けているという気もします。
メンバー
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- 小泉 悠 准教授
専門分野:ロシアの軍事・安全保障
研究室ホームページ
<2024年4月現在>
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