脳機能素子医科学分野 栁下研究室
脳の記憶素子から情動学習と精神疾患を理解する
脳機能は神経細胞が形作る複雑な回路が生み出します。なかでも神経細胞同士の接続点である「シナプス」は、脳の部位ごとに異なる機能特性を持つ重要な素子であり、これらが集まることで高度な脳機能が実現されています。この脳の機能素子自体がもつ複雑さと多様性は、人工ニューラルネットワークモデルとの決定的な違いです。この機能素子の特性から脳を理解すること、そしてこれらの脳機能素子の特性変化から精神疾患をはじめとする脳機能の変調を理解することを目指しています。
単一シナプスから行動まで多階層にわかる研究
私たちの研究室では、2光子励起顕微鏡をはじめとする最先端技術を駆使し、個々のシナプスが機能素子としてどのように作動し、そしてこれらの集団がどのように細胞レベルの特性を示すのかを緻密に解き明かすことを目指しています。そして、この細胞機能を形作る分子基盤の解明から、個体の行動的な意義にいたるまで、分子・細胞・行動をつなぐ多階層的な研究を展開しています。特に、学習や意欲を制御するドーパミンやセロトニンといったモノアミンの作用や、近年脳機能への重要性が注目されているサイトカインなどの免疫系の作用に焦点を当てています。
精神疾患は脳機能素子からどのように理解できるのか
長らく未解明な部分が多い精神疾患は、遺伝と環境の相互作用、すなわち「社会と脳の間」で生じる障害であるため、その理解が難しいと考えられます。私たちは、脳の機能素子が環境の特性とどのように噛み合わずに不調を来すのかを、動物モデルを用いて要素を検証していきます。動物モデルでの知見がいかにヒトの理解と結びつけるか、という難問に挑むトランスレーショナル研究を推進していきます。
私たちは2026年から先端研に研究室を立ち上げることになりました。これまで長らく医学系研究科で研究を続けてきましたが、生物医学の枠に捉われない多様な専門家が集う先端研の環境で研究できることを楽しみにしています。 栁下が東大入学後、最初に大腸菌の培養といった生物実験を学ばせていただいたのがこの先端研でした。同時に先端研には知識科学の研究室など、多様な研究が展開されており、異分野が融合する知的活気に溢れており、ワクワクしたことを今も鮮明に記憶しています。 そんな思い出深い場所で改めて、自分が知的な刺激を受け、そして若手とともに新たな知を生み出す研究に邁進できることを大変嬉しく思っています。これまでの医学研究の基盤をもとに、先端研ならではの学際的な研究を展開していきたいと考えています。
メンバー

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- 栁下 祥 教授
専門分野:神経科学
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