先端研の全分野と連携する「先端アートデザイン分野」「Nature-Centered」を追求するチームとは 広報誌『RCAST NEWS』
113号掲載
- 先端研ニュース
2021年7月14日
「最適解」だけではなく 「多角的な解」を
研究統括:神崎 亮平 教授
-
複雑化する社会課題には、科学技術が導く局所的な最適解や西洋の対処療法的な問題解決だけでは対処できなくなっています。モノづくり(科学技術)は、職人、機能の時代を経て、人間主義 (Human-Centered) へと進化し、多くの糧を人類にもたらしました。一方で、予期せぬ地球規模の社会問題を引き起こしています。多様な人からなる複雑な社会では、未来の人類や環境、地球を見据えた、自然を中心とする「Nature-Centered」でインクルーシブな社会の実現を目的とする、新しいメソッドが必要です。先端アートデザイン分野は、自然と一体化する日本人の精神、他を慮る心を原点に、科学技術、アート、デザインを融合した「Nature-Centered」な世界を追求し、多角的でハイブリッドな解を創出します。
TEAM
-
伊藤 節 特任教授
分野の理念・目標で共感するところは?
自然、生物に学ぶという神崎先生の研究に共感しました。人間主義ではなく、人間性を発揮して自然と共存する未来を創造する力として、デザイン・アートで科学技術の要素を融合させ、新しいシナジーを生むという思想の元、先端アートデザイン分野の設立構想をご一緒しました。あなたにとって「アート」とは?
人間誰しもが生得的な欲求から生み出す自己表現手段の一つ。どんな分野と一緒に活動したいですか?
生物学、バリアフリー、インクルーシブソサエティ、再生エネルギー、気候変動科学、数理創発システム。自分を突き動かす原動力は?
好奇心、探究心、使命感、達成感、自然の美しさ。尊敬する人物
数多くいますが、あえて1人挙げるならAngelo Mangiarotti。世界的な建築家、デザイナーで公私共に私の人生の師匠。略歴
世界各国のクライアントを持ち、プロダクトから建築まで数多くのデザイン開発、作品発表を行う。筑波大学芸術専門学群卒業、同大学院修了後、渡伊。イタリア前衛デザイン、モダン建築・デザインの巨匠に師事、1995年独立。国際デザイン賞受賞多数。多くの国際デザイン賞の審査員、国内外の多くの大学で教員を務める。
-
近藤 薫 特任教授
分野の理念・目標で共感するところは?
キャンパス公開での『時計台コンサート』をきっかけに先端研とのお付き合いが深まりました。私が常々感じていた芸術と社会がすれ違っているという感覚と、科学者がこれまでの社会問題スキームに疑問を持っていること、両者の根っこは同じことなのではと思い、この分野への参加を決意しました。あなたにとって「アート」とは?
世界にあふれる奇跡を気づかせてくれるもの。どんな分野と一緒に活動したいですか?
全てと。芸術領域はあらゆる分野の対極にあり、しかしあらゆる分野と密接に繋がっていると思います。自分を突き動かす原動力は?
自らの芸術性を追求したい。尊敬する人物
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ氏。音楽の本当の可能性を教えていただいた。略歴
東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスター。東京藝術大学をアカンサス賞を受賞して卒業後、同大学院修士課程修了。国内外の主要オーケストラで客演コンサートマスターを務める。バロックから現代音楽まで幅広いレパートリーを持ち、常に新しい表現を模索する。東京フィル創設時のコンサートマスター近藤富雄は祖父。
-
伊藤 志信 特任准教授
分野の理念・目標で共感するところは?
「科学技術とアートデザインの融合」に感銘し、設立に携わりました。科学技術とクラフトマンシップが同時進行するような予期せぬ創造性の発掘を試みることにより、専門分野の境界を超えた知識と経験を融合し、新しい価値を持つデザインを生み出す研究を行いたいと考えています。あなたにとって「アート」とは?
自己表現の手段のひとつであり、人間が人間であるための重要なファクターです。どんな分野と一緒に活動したいですか?
生物学、生命学、エネルギー、素材、人権、地域創生、インクルーシブ、気候変動科学、 数理創発システム。自分を突き動かす原動力は?
自然を感じること。色々な方々との出会いと会話。尊敬する人物
イタリアデザインの巨匠アレッサンドロ・メンディーニ氏。私がイタリアに渡るきっかけになったアルキミア運動の先導者です。略歴
空間、インテリアからプロダクト、先行開発からグラフィックまで総合的に行う、デザイナー、デザインディレクター。世界の家具やオブジェブランドから多数の作品を発表。多摩美術大学卒業、CBS SONY (現 Sony Group) 勤務。ブランド構築、子供からアート領域まで商品開発に携わる。渡伊、Domus Academy 修了。ー国内外の芸術系大学で、教鞭を執る。国際デザイン賞受賞多数。
-
吉本 英樹 特任准教授
分野の理念・目標で共感するところは?
情報技術の発展による利便性の一方で、職人的なものづくりとの間には距離があると感じていました。自社のビジネスだけでなく、この二つが互いに価値を感じて一つになるような新しい付加価値を創る研究活動を深めたいと考えていた時期にこの構想を伺い、ぜひ一緒にやらせてくださいとお願いしました。あなたにとって「アート」とは?
自身の奥底の、本当の理想を、炙り出す試み。どんな分野と一緒に活動したいですか?
環境、経済、政治など、私が生み出すアイデアを大きな系の中に捉えて頂けるような分野。自分を突き動かす原動力は?
自らの理想世界で自らが生きたいという欲求。尊敬する人物
ロンドンで出会いサポート頂いた投資家。人情と理性の両面で虜にされる、圧倒的なボス。略歴
世界的に有名な高級ブランドを顧客に、プロダクト開発から展示会ディレクションまで様々なデザインプロジェクトを手がける。東京大学工学部卒業、同大学院修士課程修了後、渡英。Royal College of Art(英国王立芸術学院)博士課程修了。博士(イノベーションデザイン工学)。2015年にロンドンで「TANGENT」を起業。工学とデザインの領域で受賞多数。
Nature-Centeredの追求 ~ 科学技術、アート、デザインの融合世界とは?
これまでの課題解決は、① を主に活用するHuman-Centeredなスキームでしたが、先端アートデザイン分野では①②③のスキームを活用します。これによって、自然との共生・共存を図るNature-Centeredの解決スキームが閉じることになります。従来の発想からの根本的な転換により、真のインクルーシブ社会を目指します。
3ラボが連携し異分野融合のケミストリーを促進
デザインラボ/自然から学び自然に還す「和」のクリエイティビティ
- 森羅万象を大切に考えるアジア、日本発の自然との共生、異なる分野間の協調、「和」の科学技術による問題解決を提案。「感性、情緒あるクリエイティビティ、人間性」を発揮し、伝統技術とアートとデザイン、テクノロジーの融合、科学技術とアート&デザインが同時進行する新しい和のクリエイティビティを打ち出す。
■ Nature-Centered、Inclusive Societyとデザイン
■ クラフトマンシップと科学技術
■サスティナブル・デザイン
■ ミュータント・アクティブ・デザイン
など
アートラボ/アートによる多様性のある社会の実現
- アートは直接な社会課題の解決方法とはならないが、人間のあらゆる社会活動の行動原理に影響を与える。人が原初より持つ芸術的な完成「Art Origin」に刺激を与え、具体的に表出「Art Expression」させることで社会に多様性をもたらす。クラシック音楽を中心に、和の感性を取り入れたサロン的活動を展開する。
■ RCAST サロンコンサート
■ 重症心身障害児病棟コンサート
■ サスティナブル・デザイン
■ Nature-Centered コンサート
など
デザインエンジニアリングラボ/テクノロジーとノスタルジーの接点に新たな付加価値を
- 現代社会に利便性をもたらす情報技術と、利便性では測れない伝統工芸や職人的ものづくり。理性と協働する先端技術と感性と共鳴する手仕事の接点を掘り起こし、二つが互いに価値を補完し合いひとつになるような融け合わせに新たな付加価値をつくる。そこにこれからの新しいチャンスがある。
■ クラフト&テクノロジー
■ 心身の健康のための最先端デザイン
■ 日本と英国をデザインでつなぐ
など
関連タグ