身体情報学分野 稲見・門内研究室
人間工学、生理学の知見に基づき、身体性をシステム的に理解し設計可能とする
生理的・認知的・物理的知見に基づき、物理情報システムとしての身体の機序を追究する「身体情報学」に関する研究を行っている。人間が生得的に有する感覚機能、運動機能、情動機能、知的処理能力を、計測・通信・制御を通して拡張する。
拡張身体
視線・表情・心拍などの生体情報や,運動予測・意図などの感覚・知覚の計測技術と、ロボット制御や筋電気刺激などによる介入技術とを統合し、人間の入出力を拡張する技術に関する研究を行う。ユーザの意図を適切にセンシングし、作業対象の情報をユーザの身体にフィードバックすることを通して、人間の能力の拡張や新たな身体観の獲得などを実現するための工学的な研究開発を行う。
拡張コミュニケーション
人間の身体と心は不可分の関係にあり、知覚や感情などの主観的体験は自己・他者の身体を媒介として構成される。自己と他者を含めた系において、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実感、ウェアラブル技術、ワイヤレス技術、ロボット技術、テレイグジスタンスなどを用いて物理的・認知的情報の流れを制御することで、主観的体験を変容するための方法論を明らかにする。異なる属性や嗜好を有するユー ザ間のコミュニケーション支援を、超高齢社会対応や多様な人々が活躍するスマートシティの実現などに向けて社会実装することを目指す。
ワイヤレスインタラクション
計測や通信においては、体外(空中)では電磁波が、体内(水中)では超音波が用いられ、両者の物理層は分断されている。そこで、これらをつなぐ新たなワイヤレス技術の研究を進めている。具体的には、テラヘルツ波を照射して体内に非接触で超音波を生成する技術や、移動する人や端末とのテラビット級通信を可能にするビームトラッキング技術などを実現し、生体計測やユーザインタフェースの革新を目指している。また、これらの技術を応用し、現代の工業製品から千年前の歴史資料までを対象とする非破壊検査への展開も進めている。
自在化技術と身体性編集
テラヘルツ波を用いて胸部に現れる心拍動を衣服越しに計測可能な非接触聴診器
身体能力を拡張する運動介入技術
当研究室では、@star.rcastというドメイン名を使用しています。これは、“Science and Technology of Artificial Reality”、すなわち「人工現実感のための科学技術」の略称で、90年代から舘暲名誉教授が使用されてきたドメイン名を引き継いだものです。STARという4文字の拡張 性の高さは驚くべきことに当初より織り込まれており、現在、当研究室では心身の統合を目指すS o m a t i c sを核として、テラヘルツ波 (Terahertz)や人工知能(AI)を援用し、人間の認識( R e c o g n i t i o n )の拡張や機能回復(Rehabilitation)に取り組んでいます。
キーボードやマウスを人間が操作して行う作業は、すでにAIがこなし始めています。その様子を眺めながら人間について再考すると、「わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です」という宮沢賢治の一節が鮮明に浮かんでくる思いもします。限りある生の中で認識を深め、生理的・社会的な営みを支えるために、技術をいかに活用していくかという問いは、今後ますます重要となるでしょう。研究室という場を通じて多くの方々と交流しながら、そのような問いに向き合う日々を一同楽しんでいます。(門内)
メンバー

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- 稲見 昌彦 教授
専門分野:人間拡張工学、バーチャルリアリティ、エンタテインメント工学

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- 門内 靖明 准教授
専門分野:テラヘルツ工学、ヒューマンインターフェース
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